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1 |
深爪 |
夜に爪を切ると親の死に目に会えないって、ほんとう? |
2 |
幻蛍 |
季節外れの蛍が乱舞する、山深い別荘地でのできごと |
3 |
祖母の忘れ物 |
祖母からの最初で最後のメッセージは、涙がでるほどに稚拙 |
4 |
南向きの家 |
赤ん坊が動くたび、乳臭い匂いが流れた。 |
5 |
後ろ姿 |
母が見えなくなっても、私はまだ改札口を見続けていた。霧雨 |
6 |
福神駅 |
私はストレスに押し潰されそうになると、電車に乗る |
7 |
水辺の光景 1 |
医者から歩くことをすすめられた。幸い家の近くには大和川が |
8 |
水辺の光景 2 |
大和川の土手に春が来た。蓬がふかふかと、まるで緑の絨毯 |
9 |
水辺の光景 3 |
見える魚は釣れないと、少年は私に教えてくれた |
10 |
異星人 |
ケンタウル座にある惑星に地球からの探査機が |
11 |
たちばな通り商店街 |
源三さんは無口だが、腕のよい職人だ |
12 |
幻の六大寺 |
私が肉体を持たない存在となって千数百年… |
13 |
最後の審判 |
だめだよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんは清く正しく死ななきゃ駄目だよ |
14 |
母の指 |
母の指はいつも真っ赤に染まっていた。洗っても洗っても…… |
15 |
父の外出 一 |
煙草はピース、ライターは持ち重りのするジッポ |
16 |
父の外出 二 |
女の子は可愛げのあるのが一番やで、これは勉強より大事なこと |
17 |
どうでもいい話 |
はなさか爺さんの犬の名前、「しろ」それとも「ポチ」? |
18 |
永遠の寝室 |
この星では人間は例外なく100歳まで生きる…… |
19 |
鶏頭 |
心根はいうまでもないけれど、女はミバも大事だよ |
20 |
北摂レイン |
私のせいじゃないわ、このあたりはよく雨が降るのよ…… |
21 |
音 |
会話の間の小さな沈黙。これを天使が通ると呼ぶそうだ |
22 |
五月の陽射しの |
母が逝った。私にありがとうも言わせずに逝った |
23 |
近況報告 |
人は自分に合った言葉と出合い、甦るのだろう |
24 |
赤ずきん |
おじいちゃんは狼のように、ムシャムシャと赤ずきんちゃんを |
25 |
シンデレラ |
赤ずきんちゃんの次は、やはりシンデレラ |
26 |
天使と出会った |
幼児は手にしていた白いミニカーを老人にわたし、右手を口に |
27 |
涙形の |
海辺のリゾートホテルで涙形のペンダントを失くした |
28 |
猫坂の女 |
猫が背を丸めて眠っているようなS字形の坂がある |
29 |
四月三日 |
桜の見えない年でも、決まって四月三日は花見の日だった |
30 |
甘えない犬 |
甘えない犬だった。雑種としての分をわきまえた犬だった |