川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                      夢の謎解き


      
    
    睡眠の質の悪い私は、覚醒しているかうつらうつらとしているかで、夢ばかり見ている。
    だが慣れれば、それはそれで良しとし、時には「ラジオ深夜便」で、興味深い話にも出会え、
    不眠症もそう悪くないなあと、ちょっと得をした気分になる。

    ところがである。最近ヤバいのだ。
    夢に出てくる人が揃いも揃って、もはやこの世の人ではないのだ。
    この世には仲のいい人もたくさんいるのに、彼らは一向にやって来ない。
    縁起が悪いなあ……。

    母が亡くなる数年前のことだ。
    「私を迎えに、あの世からとっかえひっかえ知り合いが来るねん。どうしたら来んように
    なるのかな」
    「でも夢とは言え、お父さんやお母ちゃんに会えて、嬉しいのと違うの」
    「ちっとも嬉しない。気色悪いだけ」
    だったら、もう来んといてと断ったら、の私の言葉に「うん、そう言う」と、母は明るく
    答えた。
    以降、あの世からの訪問者はぴたりと止んだそうだ。

    こういう時だ。私が逆立ちしても手に入れられない「素直」と言う性質を、羨ましく
    思うのは。
    純真で無垢で。なんだか品性が上等に思える。


    数日前の夢はこうだった。
    祖母と父と母、政治活動をされていたHさん、こういう人になりたいと憧れたMさんの
    5人が、車座になって語らっている。祖母や両親と、HさんMさんは面識がない。
    それなのにお互い古くからの友人の様で、楽しそうなのである。
    父と母は離婚をしたのに、そんなことは忘れたかのように、自然にふるまっている。
    96歳で彼岸に渡ったMさんが、当然のようにグループを仕切っている。
    社会的地位の高かったH氏も当然のごとく、Mさんに従っている。
    みんな笑っていて、長閑な時間が緩やかに流れているようだった。
    極楽にいるんだなと、夢の中の私は呟いている。

    目覚めた後も、母とは違い、気味悪い夢だとは思わなかった。
    それどころか、真綿に包まれたような、温さと懐かしさを感じている。
    みんな私の大好きな人ばかりである。
    そして私を大好きだった人たちである。

    そうか、きっとそうだ。心配しているのだ。
    最近元気のない私を気遣って、誘いあって励ましに来てくれたのだ。
    足が悪いはずの母もMさんも杖をついていなかった。
    喘息の父も咳をしていなかった。
    「私たちが貴女を護っているから安心して!だから、もっともっと今を謳歌しなさい!」
    

    夢の謎解き、これで合っているかなあ……。
   
    
    母の夢の謎解き「お迎え」。母娘でもこんなに違うものですね。

                         2019.3.13