川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                    化粧品



    珍しいものというか、懐かしいものをみつけた。

    昔のクラブ化粧品、今はハート化粧品というらしいが、そこのクリームを買った。
    『ええ歳やねんから、もっといいもの(高価なもの)を使わんと、効かへんよ』
    と、友人たちの声が聞こえてきそうだが、 
    「ええねん、ええねん。私の肌は丈夫です」  

    むかしむかし、叔母が使っていたクリームだ。近所の小母さんたちも使っていた。
    大正ロマン風のラベルの女性がお洒落な感じだった。それとも鹿鳴館の女性だろうか。
    創業者の中山太一氏がモデルの「コスメの王様」の小説も読んだ。
    小説には通院する病院の所在地、神戸の花隈が登場するのも、面白い。
    そんなこんなで、買ったのだ。

    どうやら私は化粧品ですら、郷愁や面白さで買うらしい。

    ふたを開けると雪のような真っ白なクリームだった。
    手に取るとふうわりと優しい手触りだ。
    子供のころに覚えのある香が広がる。散髪屋さんの匂いだったかなあ……。
    嬉しがりやの私は早速、顔につけてみる。
    うん、いい感じだ。と、思う。

    明治の末から作られているクリームで、バニシングクリームと言うらしい。 
    ちなみに価格は安く、800円もしないのだ。
    
    何よりクリームをぬるたび、叔母を思い出すのが嬉しい。
    



                      2024.4.4.