川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                      リベンジ



    去年の若草山の山焼きはさんざんだった。
    穴場の佐保川まで足を運んだのに、直前の突然の雨で点火しなかったのだ。
    スゴスゴと帰り道につきながら決めたのだった。来年こそは。リベンジ!だと。
 
    友人からはもっと見えるいい場所があると教わっていたが、なにぶんリベンジである。
    まずは同じ場所からでしょうと、昨年と同じ佐保川の下長慶橋の欄干にへばりついた。
    やはり、人影はまばらだ。

    6時15分、花火が上がった。
    川辺の花火は空と川面の両方に大輪の花が咲き、趣ある風情だ。
    さあ、いよいよだ。真っ赤に燃える若草山が見えるはずだ。
    期待値大である。

    「うん? 見えないな。どうして? 角度が悪いのだろうか?」
    こういう時の行動は早い。
    腰を庇いつつ、友人から教えられた場所まで私は走った。
    いや、人様からみればほんの少し速足というところかもしれないなあ。
    
    100メートルほど戻ったとき、「わあっ」と声が出た。
    山の頂上に金色に輝く炎が長く伸びている。頂上から下方に向かって帯のように炎が
    流れている。白い煙が上がっている。
    碁盤の目のような通りの筋、筋から、勢いよく燃える山焼きが見える。奈良だなあ……。
    知らず知らずに私は炎に染まる山に向かって手を合わせていた。

    さっそく息子夫婦に写真を送った。
    すぐに返信が来た。「これどこ?」
    「若草山の山焼き」
    「近所の火事かと思った」
    「これでも頑張って撮ってんよ!」 
    
    盛大に燃えたので今年は縁起がいいそうである。
    
    今年も写真は駄目でした。昨年の山焼きの様子です。


            2024.1.27