川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                     仁王門


    約1年の修復期間を要した葛井寺南大門(仁王門)の開門式が、7月4日に執り
    行われた。
    ベンガラで塗られた赤い門の、落ち着いた中にも華やかで美しいこと。
    インドのベンガル地方より伝来したので、ベンガラと呼ばれているそうだ。
    赤い色は魔よけの色。この厚い扉を邪悪なものや魔は通れない。
    善男善女が潜る門は、大阪で1番の大きさだ。(3間楼門としては)

    それに柱の細工物の、品の良い美しさには目を見張る。
    赤色、水色、黄色に緑、紺、そして純白。なんとエキゾチックな配色だろう。
    木鼻と呼ばれる、柱の出っ張りに細工された象や獏。寺を守る霊獣たちだ。
    他にも龍や麒麟、火災から守るためにナメクジが使われることもあるという。
    なんと昔の棟梁や細工師の想像力や遊び心の豊かなことか。
    感心しきりである。
    

    去年の秋、私は修復中のこの門を見学した。
    2階から3階に上ると、ちょうど仁王像の顔が真正面だ。体に不安を抱えていた私は、こういう
    機会はまたとないと、仁王像に直談判というか願い事をしたのだった。
    
    憤怒の形相をした仁王像は、まこと頼りがいがあった。
    きっちりとお礼を申さねばなるまい。
   
    西国巡礼5番のこの南大門を潜るたび、様々な思いが頭をよぎるだろう。
    私にとっては特別な仁王門となった。
    門の上方から、荘厳さや優しさ美しいものが、シャワーのように降り注いでくる.

    
                                       直談判



                22021.7.4.