川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
ホーム  エッセー  旅  たわごと    雑感 出版紹介 




                 へこむなあ



   何が落ち込むと言って、半年以上治療を受けているのに、「悪くなっていますよ」と、
   薬を増やされるほど落ち込むことはない。
   1時間以上も待って、痛い治療を受けているのにである。
   ―― このまま耳は聞こえなくなってしまうのだろうか ――
   ―― 喘息が酷くなって、呼吸困難の日々を過ごすのだろうか ――
   
   へこんでいる私に、もう1人の私がささやきかける。
   ―― でも真っ赤な実が沢山ついたやない。赤は慶事の色やよ ――
   ―― とんでもなく、いい事があるかもよ。フフフ 楽しみね ――
   ピラカンサスの力は大である。

   マイナー志向の私とプラス思考の私が同居している。
   おかしいなあ大雑把なO型なのに。
   で、結局、プラス思考の私が勝つのだ。
   

   何が落ち込むと言って、ボロボロな状態なのに、
   「貴女、いつ会っても元気そうね」と、言われることだ。いや、言って下さることだ。
   多分、これって喜ぶことだと思う。
   でも、本人にしてみれば複雑である。いや「へこむ」のである。
   「いやいや実は……」と説明するのは野暮だし、かと言って、黙っていれば嘘をついている
   ような気分になる。嘘はダメだ。変なところで律義なのだ。
   仕方なく私は、曖昧に笑うのである。
   自分が知っている自分と、人様から見える私とはずいぶん差がありそうだ。
   でもどちらも私なのだろう。
   
   まあ、ええやん。庭のピラカンサスがあんなに真っ赤やねんから。
   
         お時間のある方は、「恋の辻占」をお読みください。性格の話です。


               2018.10.30