川上恵(沙羅けい)の芸術村
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             ゆる体操



    1番軽いダンベルを10回上げ下ろししただけで、腕が故障して以来、運動には色目を
    使わないことにした。3ヶ月経つのに右腕は、どうかした拍子にまだ痛むのだ。
    だが、
    私の決意とはなんと脆弱なものか、たった1枚のチラシで気持ちがぐらついた。
    「5名だけの追加募集」の言葉に、乗ってしまったのだ。

    ゆる体操、である。

    「気持ちい〜、気持ちい〜」と言いながら、両手や両足をこすり合わす。
    まるで、ハエが手をする足をするだなあ、と冷ややかに面白がっている。
    だが、私向きではある。
    寝ころんで、あるいは椅子に座って体操をするのだ。

    「ブラブラブラブラ」と声を出しながら、足を揺らす。
    「もぞもぞもぞもぞ」と言いながら、腰を揺らす。
    その名の通り、ゆるーい体操である。心拍数も上がらないし、汗も出ない。
    実に、私向き。

    気持ちい〜。ブラブラ。もぞもぞ。
    はたしてこれで効果があるのだろうかと半信半疑だ。
    友人たちは、プールにホットヨガ、テニスにジム……と、結構ハードなのに。    
    けれども、「しないより、ましだろう」
    
    かつては、
    ヨガ教室にも行った。プールにも行った。太極拳も習った。ノルディックウォーキングも
    習った。
    だがどれも3年以上続いたためしがない。2本のポールは物置で誇りをかぶっている。
    飽き性なのかなあ……。

    月に2度、いま私はゆる体操教室に通っている。健康な体に憧れるのだ。
    
    天上からは祖母や父母の声が聞こえる。
    「無理してしんどい事せんでもええのに。めえちゃんは、頑張るのんって似合わへんで」
    と、決意をぐらつかせるようなこと言いながら、
    「それにしても懲りない娘だなあ」と、笑っているに違いない。

    はたして、今度はどれくらい続くのだろう。


               2019.10.30