川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                    野菜風呂



    市販の入浴剤に加え、ジュウヤクや蜜柑の皮、大根の葉を干したものを風呂に浮かべている。
    夏には、これにキュウリとハーブが加わる。

    梅雨から夏にかけて、裏の庭一杯に、ドクダミが清楚で可憐な白い花を咲かせる。
    乾かせば生薬の十薬となる。
    蜜柑は、知人が無農薬でワックスのついていないのを箱一杯送って下さる。
    干せば、これも漢方薬の陳皮である。
 
    今年は大根が豊作だった。
    栄養価が高く瑞々しい葉は、干せばこれも干葉(ひば)と名を変える。
    食べて体にいいものだ。お風呂に浮かべて悪いはずがない。
    
    これらをその日の気分によって、使い分けている。
    市販の入浴剤ばかりだと、飽きてしまうのだ。

    十薬はいかにも効きそうな匂いだ。どう贔屓目にかいでも芳香とはいえない。
    蜜柑は、甘やかで爽やかだ。
    干葉は、うすーい薄い野菜スープの匂いがする。
    だが、どれも体の中から、じんわりと、悪いものが出てゆく気がする。

    そういえば子供の頃は「糠袋」で、顔を洗っていたな。
    ヘチマで体を洗っていたな。
    裏庭では、ヘチマが大きな実を揺らしていたなあ

    私が野菜風呂に入るのは、郷愁を感じたいからかも知れない。
    きっと向こうの世界で、母が驚いていることだろう。
    「めえちゃんが、そんな面倒なことをするようになってんなあ。信じられん」

    今夜は、十薬の湯にするか。


                 2019.2.14