川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                忘れてる!



    久しぶりに友人と会うことになった。
    彼女はいつも身なりや化粧に気を配って、私を感心させている。
    そんな相手の時は、私も化粧をせねばならぬ。

    最後に化粧をしたのが2月の中頃。以来、マスクをいいことに化粧をしたことがない。
    まずファンデーション、のりは悪いがこれは仕方がない。OKとしよう。
    次は目。
    私はいつもアイシャドーを薄くつけているが、はて今の季節は何色だったかな?
    何色が流行っているのかな?
    
    「まあ、いいか」と、うすーいブルーにする。
    なんか変だな。どこがどうとは言えないが、なんか変なのだ。「まあ、いいか」
    次にアイラインを引く。
    あれっ、目に沿って真っ直ぐに引けない! ギザギザだ。
    指先に力が入り、思うように手が動かない。
    すっかりラインを引くコツを忘れてしまっている。
    これは、「まあ、いいか」では済まされない。

    冷や汗をかきながら、なんとかラインを引いた。

    眉に至っては、左右の形や太さが同じにならずに、イライラを通り越して笑ってしまった。
    こんな難しいことを、以前はなんなくこなしていたんだな、と変なところで感心する始末だ。
    何事も続けるって大事だなと、人生の悟りにも似た心境になった。
    
    で、最後の口紅で、ふと疑問がわいた。
    マスクを着けるとき皆さんは、口紅をぬっていらっしゃるのだろうか?
    マスクについた赤い色というのは、いただけないなあ……、ドキッとする。
    考えるのも面倒になって、薄いピンクのリップクリームにする。

    久しぶりに化粧をした顔は、少し違和感があった。端的に言えば変だった。


               2020.6.21