川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                    梅



    じっくりと花を愛でるの2月は、梅だ。

    「来年は和歌山の南部に行こうね。1泊して美味しい梅酒を買おう」
    コロナ禍だ、我慢をしようと、
    今年は近間の近つ飛鳥の風土記の丘へ行った。
    とは言え、ここは私のお気に入りの散歩コースだ。

    紅梅が真っ盛りだった。
    高く真っ青な空に、臙脂色が溶けはしないだろうかと思うほど、鮮やかに美しい。
    いつも紅梅の盛りを見過ごしてしまうので、がっかりしていたが、ラッキー!
    白梅と紅梅の違いって、実は花びらの色ではなくて、木の色だそうだ。
    「へえ、そうなんだ。知らなかった」
    紅梅の切り口は、それは綺麗な濃いピンク色。 
    

    ふと、ごく最近、梅を見にここを訪れた錯覚に陥った。
    「まるで昨日の事のよう」という形容を、いままで馬鹿にしていたが、あの形容は
    実に正しい。
    去年の事だ。はっきりと覚えている。
    写真グループの人達が「ルリビタキ」という鳥の撮影に来ていたのだ。
    私はカメラを覗かせて貰って、初めてルリビタキを見たのだ。
    あれから1年経ったのだ。まるで昨日の事のようなのに。  
    私は時のたつ速さが少し怖くなった。
     
    木々に雪が積もったように白梅が美しい。遠目には雪景色だ。
    白梅の下を歩いていくと、ルリビタキを見た場所に、男性が1人座っていた。
    鳥が来るのをじっと待っているのだ。
    来るか来ないか分からない、青い色の鳥を見るために、じっと。
    
    梅の香りが流れてくる。
    梅と言い、水仙と言い、どうして早春の花はこんなに香りがいいのだろう。




                2021.2.14