川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                 爪



   形のいい、綺麗な爪にあこがれる。
   そんな爪の持ち主はきまって指も細長く、手が美しい。

   私は男女を問わず綺麗な手の持ち主が好きだ。
   「綺麗な爪やねえ」
   褒めた後で、顔を褒めずに爪だけを褒めるのは失礼かなと思ったりするが、
   綺麗なものは綺麗なのだ。

   落ち込んで仕方がないとき・心が弾むとき・退屈なとき・喧嘩をしたとき・雨の日etc
   そんな時は爪を真っ赤に染めたり、自分でネイルアートをしたりと、
   爪に神経を集中することで、心のざわつきを鎮められる気がする。
   綺麗に仕上がった指に見ほれ、手の平を目の前でヒラヒラ泳がせたりして。

   爪で遊べない女は、人生を少し損しているなあ。
   豊かな至福の時間を、味わえないもの。

   
   私の指は短くて爪は蜆貝のようだ。
   派手なネイルなどしようものなら、指先がピエロになってしまう。
   どうしても爪のお洒落をしたいときは、目立たないベージュ色を塗る。
   それでも心が浮き立つから、不思議だ。

   私の指や爪を見て、慰めるように「働き者の手やねえ、器用な手」と、人は言ってくれるが、
   私は働き者でも器用でもなくていいから、形のいい指と爪が欲しい。
 
   春には10本の指先に桜の花弁を散らそう
   夏は深海のブルーかな
   秋はダークな赤か落葉色
   冬は、これはもうキラキラの石をいっぱい散りばめよう
 
   ああ、形のいい指と爪が欲しい。

                   2018.9.2