川上恵(沙羅けい)の芸術村
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               天使の階段



   太陽が雲に隠れている。
   けれども雲の切れ間から光が漏れて、柱のような光線が放射線状に降り注いでいる……。
   神々しくも幻想的な光のカーテン。

   こんな光景に出会ったことはありませんか?
   宮沢賢治は「光のパイプオルガン」と称したそうですが、「天使のはしご」や
   「レンブラント光線」の別名もあります。正式には「薄明光線」と言うそうです。
   車に乗っていてこの光景に出会うと、私は光が降り注いでいる場所まで車を走らせたい
   衝動にかられます。
   金色の柔らかな光に包まれたそこは、神様から祝福された聖地。束の間の楽園。
   

   ふと、気になりました。
   日本に天使はいるのでしょうか?
   天使は神と人間をつなぐ存在、でも、日本の神と西洋の神は違う気がします。
   日本の神は直接人間界に働きかけます。
   だから天使は日本にはいないのです。
   ならば、日本で天使に匹敵するのは誰でしょう?
   天女? だめです。性を感じさせる大人は。性は混乱の元です。性を超越していなければ。
   妖精? だめです。弱々しすぎて、とうてい人の世話が出来るとは思えません。
   阿弥陀如来? だめです。抹香臭くって。それに結構、歳をくっているんでしょう。
   あれも駄目、これも駄目。宗教や文化が違うということは、何事によらず難しいです。
   
   天使の事は、またの機会に考えるとして、
   ここで、また、ふと気になりました。
   光の階段は上るのでしょうか? 降りるのでしょうか? 
   昇天か、降臨か……。
   私には、階段 = 昇る  のイメージがあるのです。
   でも天使はきっと、天上から階段を下りてくるんでしょうね。
   地上の誰かを祝福するために。

   私の夢想はとどまるところを知りません。
   こうして秋の夜長は過ぎてゆくのです。

   あ、そうそう。「天使が通る」という美しい言葉もあります。
   会話が途切れたちょっと気まずい、あの瞬間を言うらしいのです。
   天使が通っているのだと思えば、束の間の沈黙も楽しめる気がしませんか?
   

  
                       2018.9.27