川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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             散歩とタピオカ



    体は正直だ。少し涼しくなって、しかも空が高いと、散歩をしてみようかと言う気になる。
    滅多にないことだ。この気分を逃してはならぬと、早々に出かけた。
 
    お気に入りの散歩コースがある。
    家から少し遠いが、近つ飛鳥博物館だ。
    木立の中を歩けるし、疲れれば館内で喫茶も楽しめる。
    
    冬眠ならぬ夏眠をしていた間に、世間は秋色になっていた。
    大きな栗のイガに色付いた柿、ジャンボカボチャ。
    あのカボチャは食用だろうか、それとも飾りだろうか。
    すっかり秋だなあ……。
    コオロギが泣いている。他の虫の声は分からないが、コオロギだけは知っている。
    気持ちがいいなあ……。

    喉が渇いたので、散歩を切り上げて博物館の喫茶コーナーに入る。
    30分も歩けていない。まあ、いいか。歩かないよりいいだろう。


    同年齢の女性にあうと必ず、
    「タピオカ、食べた?」と挨拶代わりに聞かれる。
    「恥ずかしながら、もう食べた」と、私は応える。
    正直、もう一度食べたいとは思えなかった。丸い粒に芯が残っているようで、
    触感が美味しくなかった。
    タピオカ、タピオカと行列をしているのが不思議だった。

    店によって味が違うのかも知れない。
    博物館でタピオカミルクティーを注文してみた。
    なめらかなのど越しだ。丸い粒もプルンプルンとしていて、葛餅の食感だ。
    原料はキャッサバという南米原産の芋の一種だとか。
    なーんだ。そう有難がるものでもないんだな。
    コンニャク芋から作るコンニャクのようなものだな。

    そういえばあのナタデココはどこへ行ってしまったんだろう。

    私は太いストローで、丸い粒粒を次々飲み込んで行く。
    もう1人の私が、それってカロリーが高いんだよと、嫌味を言っている。
    
    
  2019.9.25