川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                  凧揚げ・羽根つき



   明けましておめでとうございます。
   この1年が皆様にとって、良い年でありますように! (もちろん、私にとっても)


   大和川の土手で、父親と小学生の低学年の男の子が凧揚げをしている。
   父親は首が痛くなるほど顔を空に向け、凧の糸を上手に操っている。
   カラフルな模様の凧はグングングングン、青い空へ吸い込まれてゆく。
   その顔はこの上なく幸せそうだ。
   
   息子はと見れば、つまらなそうに足元の枯れ草をいじっている。
   父親は退屈している息子に凧を持たせる素振りもない。退屈していることさえ気づかない
   のかも知れない。
   だが子供のように無邪気に楽しそうだ。
   どうやら凧には、男性を少年に変える魔力があるようだ。
   
   弟は凧作りが上手だった。
   竹ヒゴに和紙を張り、新聞紙を細く切り、四角い凧に長い足をつけた。
   呆れるほど長い2本の足だった。千切れるのと違うのと心配する私に、
   「足を長うすると、よう飛ぶねん。僕、組で1番やで、凧あげるの」

   カラフルな凧を飛ばしている父親は、息子と同年代の様だ。
   真っ黒なゲイラカイトで遊んだ年代だ。
   よく飛ぶ凧だと評判だった。
   だが、カラスか黒いごみ袋が空を飛んでいるようで、紙の凧を見慣れた私には不気味だった。
   それが今では、ピンクやブルーの蝶のような凧が、空を舞っているのだ。綺麗だ。
   スカイカイトやキャラクターカイト、カラフルカイトというらしい。
   川原では、他にも何組か凧揚げをしている。凧は競うように、冬空を元気に舞っている。
   それもそのはず、すべて父親達が揚げているのだ。反して、息子たちは揃って退屈そうだ。
   きっと、この世代の子供たちは凧嫌いな大人になるのだろうな。

   それにしても羽根つきをしている子供はいない。
   小さな羽子板で小さな羽根をつくのは、昭和で終わってしまったのかなあ。
   そうか!
   父親は息子に凧揚げを教えるのに、母親は娘に羽根つきを教えようとしないのだ。
   寒い屋外で、そんなことはしたくないのだ。
   女性は男性のように面白がれないのだ。

   だれか、羽根つきを復活させてくれないかなあ。

   少年を残した男性はそこそこいるが、少女を残している女性はごく稀である。
   
   
                   2019.1.2