川上恵(沙羅けい)の芸術村
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               聖徳太子1400年御遠忌
     


    今年2021年は、聖徳太子が亡くなられて、1400年の節目の年に当たる。
    太子ゆかりの寺院では記念行事が行われ、なかでも御廟所の叡福寺では4月10日から
    5月11日まで、記念の式典や大法要が毎日のように催される。

    4月10日、私は奉納行事・雅楽に参列した。
    笙の音色が境内から金堂に近づき、白い狩衣に烏帽子をつけた東儀秀樹さんが
    金堂前にしつらえた舞台に現れた。端正な容姿は、清らかな平安貴族そのものだ。

    「私の先祖は太子のおそばに仕えた秦河勝です。河勝は舞楽を倭国に伝えた人で、
    そのまだ先を辿れば秦の始皇帝にたどり着きます」と話されたあと、
    笙と篳篥(ひちりき)を手にされた。
    演奏曲は自身が作曲の「弓月」、そして「仰げば尊し」などである。
    心に染み入るような音色が境内の隅々にまで響き渡る。
    空には雲一つ浮かんでいない、真っ青な空だ。

    笙・篳篥はシルクロードから伝わった楽器だそうだ。
    シルクロードから中国、そして朝鮮半島を経て日本にもたらされた。
    だが今や世界中でこれらの楽器が存在し、演奏されるのは日本だけだとか。
    篳篥の澄んだ高い音が空に吸い込まれてゆく。
    雅楽が大好きだった母も、耳を澄ましてこの音色を聞いているに違いない。
    
    母の墓地は叡福寺の「太子霊園」にある。
    5月11日まで、各宗管長による法要や献茶式や献華式、練り供養などで、母も厳かに
    楽しい事だろう。賑やかなことが大好きな母は、ソワソワしているに違いない。
    次の遠忌は100年後である。
    その時私は母の隣の墓所で、1500年御遠忌の様子を感慨を持って眺めるだろう。
    「100年前は生で見たなあ……」
    


                       2021、4、10