川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                  障子



    ウン年ぶりに障子を張り替えた。
    若い頃は毎年暮れになると障子を張り替えたものだ。
    それが2年に1度になり、3年に1度になり、そのうち破れた箇所だけ継ぎはぎをするように
    なった。
    破れの箇所の上に、雪の結晶の形だったり紅葉だったりに切った白い紙を貼って、
    誤魔化していた。

    白い障子の色がくすんでいる。
    雪や紅葉があちこちに散らばり、気になりながらも見ないように暮らしてきた。
    だが今年のコロナである。
    大阪は自粛解除されたものの、なんだが出かけるのが面倒になっている。

    5月のキラキラとした太陽が障子の継ぎはぎを照らしている。
    惨めな障子だな、時間はたっぷりある。
    「よし!」と腰を上げた。

    我が家は和風のつくりである。2階の3部屋と階下の1部屋は障子が入っている。
    流石に2階の1部屋は洋風に改築したが、それでも3部屋分の障子張りである。
    計8枚だ。
    古い障子紙を破り、障子の枠を洗い乾かし、下準備をする。

    新年を迎えるために、12月の寒風の中、手を真っ赤にしながら障子の枠を洗っていた
    昔が思い出される。新年という固定観念に縛られていたのだ。
    「なーんだ、春でも秋でも気候の良い時にすればいいんだ」

    それにしても白という色は素敵だな。

    ピーンと張った真っ白な障子は、気分まで真っ新に清々しくなる。
    いっときでもすべての障子をカーテンに変えようと思ったが、取り止めである。
    障子や襖に欄間の影が美しい。
    

  2020.5.25