川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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           シャボン玉



    昨年はあんなにベランダを浄土にしてくれた蓮なのに、今年は1輪の花もない。
    鉢も土壌も昨年と同じなのに。天候のせいだろうか。
 
    だが蓮の葉に水滴が転がる様の、なんと清々しいこと。
    まるで水晶の球が転がっているようだ。
    大きな葉には大きな水の球が、小さな葉には小さな水の球が、
    ゆらゆら揺れたり、コロコロと転がったりする。

    空が写っている。私の顔も写っている。
    水滴が揺れるたび、水玉の中の世界も揺れる。
    
    水面にぷくぷくと泡がはじけている。
    葉の折れた茎が,水中で息をしているのだ。
    細い茎なのに穴があいて、一人前に蓮根の様相をしている。
    
    ふと、
    この茎をストローにしてシャボン玉を飛ばしたらどんなだろう?
    蓮根の穴は8つか9つ。
    8つも9つものシャボン玉が、一斉に空に向かって飛ぶだろうか。
    
    楽しい遊びを見つけた私は、石鹸水を作るために、そそくさと階下におりた。
    花は勿論だけれど、葉も茎もいいなあ……。

    きっとベランダは楽園になるだろうと、心が弾んでいる。
    1人遊びの上手な、午後のひと時である。


                   2019.7.24