川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
エッセー  旅  たわごと    雑感 出版紹介 



                      親友



    パソコンの調子が悪い。

    突然、画面が真っ黒になっては、私を慌てさせる。
    「データーが消えたら困るから、バックアップをとらないと」
    息子に相談すると、心配いらない。クラウドだから大丈夫だと言う。
    「クラウドって、あの雲のこと?」
    「そう、データーやファイルはみんなインターネット上に保存されている。
    それを雲に例えている」
    なんだか訳の分からない説明である。目に見えないものを納得するのは難しい。
    雲の上や天上にいるのは、あの世の人だけではないのだなあ……。

    「もう6、7年も使っているから買い替え時」。息子はサックりと言った。

    ワープロも含めると、30年も飽きることなくパソコンと遊んでいる。
    当初はデスクトップだったなあ。ノートパソコンになったのはいつごろからだったのか。
    この黒い小さな箱には、私の思いというか心がいっぱい詰まっている。
    気長に愚痴を聞いてくれ、喜びを共有してくれ、知らないことを教えてくれ……。
    時折、考えることがある。もし私がパソコンを知らなかったら、どんな人生だったろうと。
    きっと退屈なつまらない人生だったろうな。
    得難い親友である。
    私にパソコンを教えてくれた息子に感謝である。

    けど、新しい機種を使いこなせるかなあ。
    新しいパソコンが来るまで、使い慣れた愛着のあるこのパソコンに1つでも多くのデーター
    を残しておこう。
    ああ、Oのキーの調子も悪いなあ……。

                  2024.1.21