川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                 三都三園



    「三都三園」なる聞き慣れない言葉に惹かれて、小林美術館へ出かけた。
    小林美術館なる名前も初めて聞くものだ。
    それもそのはず、平成28年の設立とある。

    お目当ての美術館は浜寺公園の近くにあった。
    2階と3階が展示フロアになっていて、1階は喫茶とショップである。
    入館者は私と夫の2人だけだ。
    「ラッキー」と、口の中で呟き、こぢんまりと静かな展示室に入る。

    京都の上村松園・東京の池田蕉園・大阪の島成園の三人を「三園」と呼ぶそうだ。
    因みに、池田蕉園の名前は、上村松園にちなんで付けられたという。

    品格ある理想の女性像を追求した、松園。
    物憂げな眼差しの美人画で人気を得た、蕉園。
    そして、女性の性を写しとった妖艶な画風の成園。

    三人三様の美に、私は画の前に釘付けだ。
    特に島成園描く子供の顔に惹きつけられる。
    下がり気味の眉、斜め下に向けられた視線。
    この子は何を見ているのかと、気になって仕方がない。
    「なんだか寂しそうな顔をしているね、シャボン玉で遊んでいるのに」と、
    白い前掛けをつけた女児に、話しかけたくなってくる。
    
    それにしても贅沢な空間だ。
    世間はコロナで大変なのに、画を独り占めしているなんて……。
    女性たちの息遣いや、衣装に焚き込めた香の匂いが聞こえてきそうだ。
    夫はと辺りを見渡すが姿がない。
    一足先に1階でお茶をしているのだろう。



    画は松園・蕉園・成園の順です。会期は12月13日までです。


            2020.12.7