川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                両手に花



    「1年間ご苦労様」と年に1度、仲間から大きな花束を頂く。
    そして、その夜は、男性から深紅のバラの花束も貰った。
    照れながらの彼に、
    「おっちゃんが照れてどうするの」と、私は憎まれ口をきいた。
    まさに両手に花である。
    
    その夜の会食は、お箸で食べるフレンチだった。
    若い人なら料理が運ばれるたびに、インスタだとかで写真を撮るのだろう。
    だが私たちは、会話と料理とお酒だけに集中する。
    
    ある年齢以降、お酒は気の合った人とだけ飲むようにしている。
    気を遣って飲むお酒は、悪酔いする気がするのだ。

    気分よく酔いながら花束を抱え、電車に揺られる気分は最高だ。
    ふと酔った頭は考える。
    「今の私に花束は似合っているかなあ……」
    その点、男性は何歳になっても花束が似合う気がする。可愛いのだ。


    2つの花束は、大きな花瓶にも収まりきらない。
    バラと、バラ以外の花や枝ものと、2つの花瓶に分けた。
    花のある場所だけが、取ってつけたように華やかだ。
    家中、きれいに掃除しないといけないな。
    花の似合う家にしないといけないな。
    
    翌日、母にもお裾分けしようと、ピンクと黒のカラーを花束にして墓に持って行った。
    「お母ちゃん、こんな花見たことないでしょ」
    黒色のカラーはホットチョコといって、人気の花だそうである。
    墓石の前はクリスマスとお正月が一挙にやってきたようだった。
    
    
                       2019.12.9