川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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              ルリビタキ


 
    梅林を歩いていると、20名ほどの人がある1点を眺めていた。
    皆さん、高級そうなカメラを持っておられる。
    どうやら写真クラブの人達らしい。

    「何を撮っていらっしゃるんですか?」
    望遠レレンズ付きのカメラを、三脚につけた人に尋ねた。
    「ルリビタキですよ。ほれ、あそこの梅の根元にいるでしょ」
    親切に教えて下さるが、雀くらいの大きさの鳥を見つけるのは、私には難しい。
    しばらく探したが、気の短い私は諦めてその場を去った。

    白梅が霞のように梅林にたなびいている。
    可憐な紅梅・花傘の下に入ってしまいたいようなしだれ梅、
    「おもいのまま」などという素敵な名前の梅もある。
    30分ばかり梅を楽しんで、元の道を引き返した。
    なんと、写真クラブの方々は、まだ同じ場所におられた。
    野鳥を専門に撮るグループかもしれない。

    「いいのが撮れましたか?」と、声をかけると、手招きをして自分のカメラを
    覗かせて下さった。
    「わあ、鳥の宝石。なんと綺麗なこと」
    無謀にも、私は自分の小さな安物のデジカメを取り出した。
    キャノンのIXYである。
    だが、なかなか鳥の姿を捉えられない。肉眼では見えているのに……。
    何度も焦点を合わすが、写るのは梅の枝や地面ばかりである。

    「このカメラでは、いや私の腕では無理です」と、その場をはなれようとした時、
    「良かったら、写しましょうか」と、言って下さった。

    流石である。弘法は筆を選ばず。ルリビタキは掌サイズのカメラに収まった。
    
    それにしても、同じ場所にじっと留まっている鳥って珍しいなあ……。
    ブルーと白と黄色の美しい鳥は、群れをつくらず、単独で生活するらしい。
    なんだか親近感を覚えるなあ。
    
    優しいカメラマンと美しい鳥、素敵な出会いが2つもあった日だった。

 (拡大したので画像が粗くなってしまいました)
            
                     2020.2.21