川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                    ランドセル



    折り紙と言えば、鶴と奴さんぐらいしか折れない私だが、世の中には器用な人が
    いるものだ。
    掌にのった可愛いランドセルに、私は思わず「折ってみたい!」
    でも指がねえ……、この指じゃねえ。

    「それ、差し上げます」
    ランドセルの中には、小指の爪より小さな本が入っている。
    「わあ、豆本のまだ豆本やね」
    
    普通の色紙2枚で出来た、カラフルなランドセルに小学生の頃が甦る。
    その頃ランドセルといえば、黒と赤しかなかった。男の子は黒、女の子は赤だ。
    それが普通だったし、他の色のランドセルなど考えもしなかった。
    それが今ではピンクにブルーにパープル、グリーンなどなど。もちろん黒と赤も健在だ。
    もし今の時代なら、私は何色のランドセルを背負うだろうか……。
    初めて腕時計をはめた中学1年生の私は、紺色の時計バンドだった。

    この折り紙のランドセルに、何を入れようか?
    もし私が男性だったら、このランドセルにオモチャの指輪を入れて、彼女にプレゼント
    するだろうな。
    えっ、オモチャなの? 本物じゃないの?

    うきうきと私はランドセルを開けたり閉じたりしている。
    



            2025.3.14