川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
エッセー  旅  たわごと    雑感 出版紹介 



            パルスオキシメーターが怖い?



    痛くも痒くもないのに、パルスオキシメーターが怖い。
    最近、指先に装着した酸素量を計る小さな器具が、ときどき作動しなくなるのだ。
    曲がった指先が原因なのか、極度に血流が悪いのか、その都度、看護師さんは申し訳なさげ
    に、手を替えさせてもらっていいですかと言い、私は変形した指先を恥じる。
    もちろんマニキュアなどつけていない、のにである。

    先日のワクチン接種時もそうだった。
    掛かりつけ医はアレッという顔をし、私の10本の指をしげしげと眺めた。
    そして右手の小指にパルスオキシメーターを付け替えた。
    「いいでしょう、問題ありません」
    どうやら器具は数値を表示したようだ。


    寸詰まりの短い指が、ますます不格好になった。
    指に哀れを感じた私は、急に指輪をはめたくなった。指を飾ってやりたくなった。
    だが今までの指輪はすべて入らない。
    入らないとなると、急に付けたくなるのが私の性格の困った所だ。
    人差し指にファッションリングなら大丈夫だ、とネットで気に入りを見つけ、
    息子に申し込んで貰った。ついでに支払いも。

    2日後、お洒落なリングは届いた。
    私はリングの写真を貼り付け、
    【有難う!! 届きました。素敵です】と、息子にメールを送った。
    【って? 指にはめてる写真を送ってください(笑)】と、返信がきた。
    【写真撮ったけれど、とても送れる代物の指じゃなかった】と私。
    涙を流しているキャラクターのスタンプが、即、送られてきた。
    嫌なことがあれば、いい事もあるなあ。

    もうすぐ診察日である。ああ、パルスオキシメーターが怖い。

            2021.6.17