川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
エッセー  旅  たわごと    雑感 出版紹介 
              



                   桜桃のジャム



    暇で暇で退屈なので、サクランボのジャムを作った。
    狭い我が家の庭にはサクランボが実をつける。佐藤錦だ。
    もっとも、山形のサクランボに比べると、実は小さく甘みも少ない。
    だが一応、サクランボの味はする。

    初挑戦とはいえ私がすることだ、なんとも大雑把で手荒な作り方だ。
    種を取り、少しの水を加え、砂糖とレモン汁を入れ、水分がなくなるまで煮込む。
    それで出来上がりだ。
    甘い香りが漂っている。
    きっと淡い赤色のジャムが出来るのだろうとの期待に反して、鍋の中は赤紫色だ。
    レモン汁の入れすぎだろうか、それとも白砂糖を使わなかったせいだろうか。
    こわごわ味見をしてみる。
    「美味しい! ちゃんとサクランボの味がしている、贅沢だなあ、サクランボのジャム
    なんて」

    それにしても私がジャムを作るようになるのだから、人生、分からないものだ。
    コロナの自粛期間はなんとも陰鬱だが、反面、知らない自分を教えてくれる。
    小さな未知に出会ったのだ。未知との遭遇は何も宇宙人やUFOだけではないのだな。
    日々の中に小さな未知はあるんだな。気づかないだけで。
    
    残ったサクランボは一輪挿しに生けた。
    庭のバラも出番ができて喜んでいるだろう。
    

                  2021.5.1