川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                 恩智神社



    廣瀬大社の静謐な長い参道に魅せられて以来、神社の長い参道に嵌っている。
    今回は、大阪府八尾市の恩智神社を訪ねた。

    「河内の総鎮守 祓いの神社」とされる恩智神社の創建は古く、雄略年間(470年頃)である。
    元春日とも言われるように、奈良・春日大社の祭神である藤原氏の祖神を最初に
    祀った由緒正しき神社だ。また水を司る神社で、千早赤阪村の建水分神社を上水分社、
    富田林市の美具久留御魂神社を中水分社、当神社は下水分社と呼ばれている。

    木立を背にした本殿の前には、神使である「卯辰」の石像が置かれている。
    卯は無病息災を、辰は開運・昇運のご利益があるそうだ。
    神龍が手にする珠はつやつやと、いかにも宝珠という感じである。
    コロナ禍で、鈴の緒など手に触れないように巻き上げている神社の多い中で、
    「ウイルスを死滅させるイオニアミストを吹き付けてあります。安心してお詣りください」
    の札が掛かっているのは、なんとも親切だ。
    これで思う存分、兎を撫で龍の珠を撫でまわせるというものだ。
    小雨のなか参拝客は誰もいない。卯と辰を独り占めだ。

    さて本題の参道である。
    石の鳥居から上りが500mほど続いた後、ようやく石段にたどり着く。
    見上げても本殿が見えないくらいの急な石段である。これがなんと131段。
    これほど急な階段も珍しい。
    早々に私は参道歩きを断念。見ているだけで心臓がおかしくなりそうだ。
    で、本殿近くの駐車場まで車で坂道を上り、下りはゆっくりと石段の参道を楽しんだので
    ある。
    石段の途中の神宮寺感応院は、足を踏み入れたくなる趣だ。さぞ夕陽が綺麗だろう。
    子鳥のさえずりが心地いい。
    参道の両脇は新緑に覆われ、緑のトンネルさながらだった。
    
    石段に沿って紫陽花を植えたら素敵だろうな。薄紫の花の帯が本殿に向かって昇ってゆく
    のだから……。まさに昇り龍だ。




            2021.5