川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                 おめでとうございます



    新年、おめでとうございます。
    いつも話のポケットをお読みいただき、有難うございます。
    本年もよろしくお願い致します。


    1月12日は私にとって、奈良までの初出の日だった。
    成人の日なのでさぞ電車は混んでいるかと思ったが、さほどの込みではなかった。
    時間帯の関係もあるのかもしれないが、平常と同じ感じで拍子抜けがする。

    お洒落をしている人は見かけるが、着物を着ている人はみかけない。
    成人式と言えば、
    私たちが若い頃はみんな着物をきて、お約束のごとく首にキツネの襟巻を巻いていた。
    キツネは両足としっぽをだらりとさせ、首からぶら下がっていた。
    もし今、車内にその光景が再現されたら、目の前にキツネがずらりと並んだいたら……、
    ああ、考えるだけで恐ろしい。

    キツネの後は、毛足の長い、息を吹きかけるとプルプルと震えそうな真っ白なファーの
    ショールだった。真っ白な集団の女性たちはみな清楚に見えた。

    なのに今年はまだ1人も着物姿を見ていない。
   
    電車は西ノ京に近づいた。
    いつものことながら、私は窓に顔を向ける。
    薬師寺の五重塔が窓外を流れる。
    松の内の薬師寺は凛と透き通った空気が漂っている。
    薬師寺が過ぎると、顔を元に戻す。次は垂仁天皇陵だ。広々とした濠が心地いい。
    私はつかの間の光景を楽しむ。この光景を眺めてもう27年だ。

    電車が大和西大寺駅に着いた。
    「あっ、いた!」
    3人の着物姿の女性が楽しそうに笑っている。彼女たちは、みな白いうなじを見せていた。
    

                  2026,1,12