川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                     オカリナ



    思い立ってオカリナを買った。
    何か新しいことを始めてみたくなったのだ。
    いままで関わったこともなく、自分の趣味と言うか、興味の対極にあるものをして
    みたくなった。
    なぜだろう……。

    宅配で届いたオカリナはずしりと重い。
    「オカリナって結構重いんだ」
    その重さは私の意欲をわずかに削いだ。
    調べてみると、
    私が買ったのは陶器だが、軽いプラスチック製のもあるようだ。

    だが、ひるんではいられない。さっそく説明書を手に吹いてみる。
    表面の10個の穴と裏面の2個の穴を、ふさいだり開けたりして音を出すようである。
    なかなかに手ごわい。
    宗次郎の音色が好き、と言うだけでは甘かったなあ……。

    ドレミファソラシド ドシラソファミレド
    「あれっ? あれあれっ? あれ〜っ?」 息が続かない。情けない音しか出ない。
    肺活量が少ないせいだろうか。
    説明書をもういちどしっかり読んでみる。
    なになに? 穴はしっかり指の腹でふさぎましょうと、書いてある。

    オカリナの穴をふさいでいる指を見て、私は愕然とした。
    指がそれて、穴が少しずつ開いているのだ。

    指は申し訳なさげに、右手は右側に、左手は左側に歪んでいる。
    私は自分の指が曲がっているのを、すっかり忘れていたのである。
    これは難儀なことだ。
    オカリナを手に、私は思案にくれている。

    
  


                    2025.11.16


      長い間、勝手をし申し訳ありませんでした。これに懲りられませず、
      これからもよろしくお願いいたします。