川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                    オホーツク文化



    「オホーツク文化」なる耳慣れない言葉に惹かれ、近つ飛鳥博物館へ出かけた。

    10年ほど前になるだろうか、冬のオホーツクの海を見た。
    宗谷岬から眺める灰色のオホーツク海は波が荒く、空も海と同じ色をしていた。
    遠くに薄ぼんやりとサハリンの島影が浮かんでいる。
    しばらくすると雪が舞い出した。灰色の世界に白い雪は美しかった。

    オホーツク文化とは、サハリン南部から北海道の東北部、千島列島にかけて、5C〜9C頃、
    本州で言えば古墳時代から古代にかけて広がった古代文化らしい。

    何となく雪の白色をイメージしていた私は、館内に入った途端、驚いた。
    今まで見た古墳時代の展示物と、異なりすぎるのだ。展示品のほとんどが茶色だ。
    きらびやかな金銀の副葬品もなく、ヒスイやメノウなどの玉もない。
    クジラやアザラシなど海獣の骨などから作られたものがほとんどだ。
    それらは骨角器と呼ばれ、容器や釣り具、骨刀、装飾品にいたるまで多様である。
    
    展示室の一角に動物の頭蓋骨がうず高く積まれている。
    流石に気味悪く私はそそくさとその場を去る。根性なしだ。
    帰ってから、説明書を読んでみると、
    竪穴住居の奥にクマの頭を積み上げた祭壇を築くなど、独特の儀礼を行っていました……。
    とある。
    「ああ、おそろしい」

    オホーツク文化のあとは、12、3C〜19Cまでは「アイヌ文化」である。
    本州の時代区分で言えば、平安末期から江戸時代までだ。
    アイヌ文化という言葉も耳慣れないものだが、改めて先住民であったアイヌの
    人に思いを馳せた。

    
クジラの背骨の容器 神功開宝 骨角器 一本だけ咲いていた梅

    
                2022.2.1