川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                ひな祭り


    いつも通っている耳鼻科の待合室が、入りきれないほど込み合っていた。
    靴の脱ぎ場がない。が、ともかく受付に行くと、2〜3時間待ちだと告げられた。
    花粉が盛大に飛び交っているのだ。
    ここでそんな長時間を待つ根気は、私にはない。
    
    耳鼻科と、ひな祭りを開催されている「佐藤家」は、ごく近い。
    ついでで申し訳ないが、お雛様を見せていただくことにした。
  
    重厚な和風の部屋に飾られた、享保雛や御殿雛、土雛、豆粒ほどの細工物や道具類……。
    今年で37回目の開催である。
    1階と2階の各部屋一杯に、緋毛氈に座った雛たちが私たちを出迎えてくれる。
    お雛様1つ1つの顔は涼やかに時には寂しげなのに、華やかである。
    これだけを飾り付けるのに、どれだけの労力と時間がかかっているのかと、ついでで伺った
    ことに気がとがめた。正座して丁寧に拝見する。
 
    池のある庭での演出も見事だ。

    白壁の蔵が建つ庭には、桃や菜の花が生けられ、さりげなく土雛が並んでいる。
    表情がたまらなく可愛い。
    庭から見る屋敷は飴色の灯りがともり、雛たちで部屋中が紅く染まっている。
    なんとも雅である。

    来年はお雛様だけに会いにこよう、と決めた。
    


    
    
    
                           2019.3.4