川上恵(沙羅けい)の芸術村
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               年季が入ってるなあ



    「あれっ、この頃すでに、右手の手首を故障している!」

    古い写真を見ていたら、赤ちゃんの息子を抱いている写真を見つけた。
    私の右手首には、包帯がグルグル巻かれている。
    息子は重くて、そのうえよく泣く子供だったので、しょっちゅう私は息子を抱いていた。
    そのせいで、右手の手首が腫れたのだった。
    もう50年以上も昔のことだ。

    「ああ、この写真も手首に包帯だ」
    旅行先の紅葉の下で、40代の私はカメラに向かって笑っている。
    長袖の服を着ているが、よく見ると右手に包帯だ。
    50代の初めに大怪我をしたので、50代の写真はあまりない。
    そういえば15、6年前には親指にギブスをはめていたなあ。
     
    ずいぶん年季の入った手首の故障だ。

    いま私は手首と膝の故障で、整骨院に通っている。
    夫と弟も同じ整骨院だ。
    さすがに私は、2人と時間をずらして行く。
    どんな顔をして夫や弟が治療しているのを見ればいいのだ。何を話せばいい?
    弟は首の骨の不調で、首をひっぱる治療をしている。
    そんな姿を見ようものなら、他に患者がいなければ私は大笑いをし、不謹慎にも
    言うに違いない。
    「首を吊ってるんやねえ」
   
    私の膝と年季の入った手首は、治るのに時間がかかりそうだ。


2024.6.30