川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                  念持仏        



    明けましておめでとうございます。
    
    真っ新な年の真っ新な日。空気までも真っ新だ。
    昨夜から私は、今年はいい年になりそうな気がしている。

    NHKの「ゆく年くる年」を見ていたら、トップに薬師寺が映し出された。
    夜の中に東塔と金堂が浮かび上がり、華麗な静謐さがえも言えぬ美しさだった。
    「大みそかに薬師寺が見られるなんて、嬉しいなあ…。今年最後の薬師寺やねえ」
    
    暮れも押し迫った日、友人が薬師寺で買ったと、カレンダーを持ってきてくれた。
    私が薬師寺・東院堂の「聖観音菩薩立像」が、大好きなのを知っているからだ。

    柄にもなく私は念持仏を持っている。
    7pほどの小さな鋳造仏だが、出会ってもう50年以上になる。
    薬師寺の聖観音像が原型になっているそうだ。
    長い付き合いだ。私の心のより所だ。
    泣き言はみんなこの観音様に話す。

    2019年は色んな事があった。辛いことも多かった。
    そんな年に、数ある寺社の中で、薬師寺が映し出されたことに、私は「何か」を
    感じてしまうのだ。
    2020年にエールを送られた気がする。

    自分に都合の良い理由付けをして、今年も私は気散じに暮らすだろう。


               2020.1.1