川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                奈良で食事を



    「久しぶりに美味しいもんでも食べに行こう」と夫が言った。
    『えらいすんませんな。毎日不味いもんばっかり食べさせて』内心の声は出さず、
    「それなら景色のいい奈良にしよう!」と、気に入りの店を思い浮かべる。
    和食がいいなあ。

    奈良はまだまだ平常とはいいがたかった。
    1件目の店は、6月2日まで休業の張り紙がしてあった。
    それではと奈良公園近くの店まで車を走らせた。
    毛並みの悪い元気のない鹿が車道に出てきて、動こうとしない。
    それも何匹もである。
    鹿を轢かないようにどの車もノロノロ運転だ。

    2軒目、3軒目は夜の食事のみ。残念!
    せっかくここまで来て、ファミレスや回る寿司でもあるまいと、最後にもう一件。
    ここが駄目なら諦めて鉄板焼きにしようと思っていたら、良かった、開いていました!

    静かな店内、飾られた骨董品の数々に目をやりながら、マスクを外す。
    ただ接待の綺麗なお姉さま方(?)はすべてマスク着用である。
    耳の悪い私は聞き返すことしきりで、そのたび夫の通訳である。悔しいなあ、この耳……。
    
    やっぱり奈良はいいなあ、コロナを忘れたひと時であった。
    帰り道では久しぶりに渋滞にあった。自粛中はどこでもスイスイだったのに。
    忘れそうになっていた日常を思い出した。


料理の下に敷く掻敷の
絵が「あやめ」だった。
ぼんやりしてる間に、
もうそんな季節なんだ
なあ
鹿の胡瓜の細工物。
鹿も早く一杯せんべいが
貰えるようになるといいね
なんだか最近ビールが
欲しくない。ワインに
しようか。
惜しげもなく生花を生け
てるお店って大好き!


           2020・5・31