川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                   名もなき花


   かるーい衝撃、カルチャーショック。

   「名もなき野の花」だとか、「雑草」だとか、あるいはもっと大雑把に乱暴に、「草」と
   呼んでいた小さな植物たち。
   わざわざ立ち止まって見ることも、手にもすることもなかった、地味な植物たち。
   なんと、それらには立派な名前があったのだ!

   けれど、それらの名前を、どれほどの人が知っているだろうか。
 
   考えてみれば、名前を持っていて当たり前なのに。
   この世に存在するものに、名前のないものは1つとしてないのだから……。
   道端や、野原で見かけるそれらは、私にとって、ただの雑草、緑色のものという存在でしか
   なかった。
   
   よく晴れた1日、「飛鳥の野の花めぐり」というイベントに参加した。

   ルーペで見るアザミの花びらの神秘。
   赤紫色の針のように細長い管状の花の、なんと毅然とした美しさ。
   多数の管状の花が集まって1つの花の形を作っているのだ。       
   
   ウシハコベにも感動をした。
   ハコベをこんなにしげしげと眺めたのは初めてである。
   ルーペの中のウシハコベは、真っ白で可憐だ。花は5ミリほどだろうか。
   5弁の花びらに切り込みが入っていて、10弁に見える。なんという細やかな技。
   清浄でまるで雪の結晶、まるで小さな聖女。ルーペから目が離せない。

   それにしても春の飛鳥は黄色い花が多い。
   ハハコグサ・タンポポ・キツネノボタン・ウマノアシガタ、ミヤコグサという床しい名の
   持ち主もいる。
   アブやハエなどの昆虫は、黄色い色に敏感なせいだろう。
   目立つ色や匂いで昆虫を呼び寄せるのだ。
   女性と同じだ。

   ここにきて、がぜんルーペが欲しくなった。
   ルーペの中には小宇宙が広がっている。
   また1人遊びの幅が広がりそうだ。

   これからは、貴方たちの事を十把一絡げにして、「草!」と呼ばないからね。
   
                             2018・5・22