川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                   長年の夢



    お子様ランチが食べたかった。ずっと。
    チキンライスの上に旗が立っていて、小さなハンバーグやエビフライ、タコウインナー。
    そしておまけのおもちゃ。
    でもまさか店内で、充分すぎるほどの大人が注文するわけにもいかず、いつも小さな子供が
    食べているのを横目で眺めていた。

    このコロナ禍で、持ち帰りの弁当を販売する店が増えた。
    行きつけの日本料理店でも、お子様ランチの弁当が売り出された。
    期待に胸弾ませ、さっそく買った。
    日本料理店なのでさすがにチキンライスではなく、小さなおにぎりだったが、ふりかけが
    添えられている。ミンチボールにエビフライ、お約束のタコウインナー、そしてゼリー。
    おまけのおもちゃは、ヨーヨーだった。

    「そんな少なくて足りるんか」
    彩の美しい季節の弁当を食べながら、それにしても変なものを食べたがるなあ、
    と夫は首を傾げた。
    「足りても足りんでもええねん。長年の夢やから」
    夢を食べてるねん、とキザな返事をした。
    次はチキンライスのお子様弁当を食べたいなあ。
    どんな旗が立っているのかな、国旗かなあ。
    

    日本中の名菓を食べつくしたいと思っている。
    昔から愛されている、土地ならではのお菓子を。
    私の好きなのは、岐阜県の恵那川上屋の「栗きんとん」 奈良県は萬々堂の「ぶと饅頭」
    鹿児島なら「かるかん」 島根県は「若草」 岩手県の「南部せんべい」 
    「ういろう」と言えば名古屋が有名だが、山口県のも捨てがたい。
    赤穂の塩まんじゅうも、京都の茶団子も好き。
    大阪なら、何かなあ、津の清の「岩おこし」かな、などなどなどなど……。

    旅行大好き、お菓子大好き人間なので、相当の種類を食べているが、なんせ日本は広い。
    お菓子の数は天文学的数字だろう。

    そこで各地の物産展や通販、挙句には生協のカタログのお世話になったりもする。
    で、今回はこんなのを注文した。
    みちのく名物・「茶屋の餅」である。
    柚餅子にきな粉をまぶしてあり、素朴だが美味しさがいつまでも口の中に残る。
    居ながらにして東北に行った気分だ。
    南部片富士と呼ばれる岩手山が目に浮かぶ。

    こうして私は居ながらにして旅をしている。
    はてさて私は、どれだけの種類の名菓を食べ切ることができるのだろう。楽しみである。
    医者からは甘いものは禁止されているのに。

    
 
 お子様ランチと茶屋の餅        2020・10・25