川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                     三つ子の魂



    「正月の3が日は、寝込んではいけない。1年中、病気にとりつかれるから」

    なりたくて病気になるわけではないが、子供の頃、正月が来るたびに祖母から言われた。
    私は虚弱体質で、医者の往診は日常茶飯事だった。
    外で友達の遊び声が聞こえるのに、布団に寝かされているのは、孤独で寂しかった。
    そんな私を不憫がって、枕元にはいつも祖母が座っていた。
    高校生になっても虚弱体質は抜けず、担任から、大きな専門病院へ連れて行こうかと、
    心配をされたものだ。

    虚弱体質というのは子供の専売特許かと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
    よほど相性がいいのか、今も私にとりついて離れない。
    「でも、お祖母ちゃん、心配しないでね。正月3が日は寝込んでないよ」

    私の体の心配ばかりしていた祖母である。
    もうすぐ後期高齢者だよと言ったら、きっと大喜びするだろう。そして言うだろう。
    「楽しい生きや。長生き、しいや」と。

    子供の頃に聞いたことは忘れないものだね、お祖母ちゃん。
    

友人から頂いた
   福虎

                   2022.1.13