川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                     魅力的なひと



    ある男性作家に聞いたことがある。
    「魅力的な女性って、どういう人を言うのでしょう」
    作家は「バランス感覚のとれた人」と、即答した。


    とびぬけて美人というのでもないが、素敵な女性がいる。
    仕事ができて、才能が豊かで、行動的で、体形をキープする努力も忘れない。
    何よりも人の話に耳を傾けるのが上手だ。そして問われれば、的確な意見を言う。
    だが、決してその才をひけちらかさない。
    家庭と仕事、そして趣味をこれほど上手にこなしている女性は珍しい。
    甲斐性があるなあ、と年下の彼女に私は爽快感を覚えるのだ。
    もちろん彼女なりの諸々の葛藤もあるに違いないが、ハイレベルの「バランス感覚」
    の持ち主だ。

    
    反対に、
    素敵な女性なのに、ひどく疲れる人がいる。
    なぜだろうと、よくよく見ていると、ある部分ある面がひどく極端なのだ。
    自分の考えに縛られ、凝り固まっているのだ。
    よく言えば個性的、自己を信じて疑わない。
    
    友人たちの顔を、1人1人思い浮かべてみる。
    はてさて。だが、いちばん疲れる人は、きっと私だろうな。


    近くの大和川を散歩していて、おだやかな川面を眺めながらそんな事を思った。
    川面はプラチナのように光りながら、緩やかに流れている。
    下草は萌え、小鳥がさえずっている。
    私は大きく深呼吸をする。川の匂いがする。
    
       ♪ はーるの小川はさらさら行くよ  きーしのスミレやレンゲの花に……
    急に歌いたくなった。充分すぎるほどの大人が突然にである。

    やっぱり崩れてるな、バランス感覚。

    
                            2019.3.17