川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
エッセー  旅  たわごと    雑感 出版紹介 



               窓際



    室内に居ながらにして外と繋がれる窓際が好きだ。
    1日のほとんどを私は窓際で過ごしている。

    朝おきて、台所に座る。南向きの台所は明るく暖かい。
    椅子の後ろはガラスのサッシで、隣家との境界は低いフェンスが張られている。
    ガラス戸から1、5mという近さだ。
    隣家はフェンスと家屋の間が3mばかりあるので、窮屈さは感じない。
    
    だが、フェンスの境界というのも味気ないと思い、私は赤い蔓バラや千両や万両を
    植えている。
    隣家も花好きで、モッコウバラや芙蓉、梅と私を楽しませてくれる。
    草花が隣家との境界だ。
    今は隣家のモッコウバラが満開で、私は自分の家の花のように愛でている。
    こうして午前中を、私はこの日当たりのいい窓辺の椅子でぼんやりと過ごす。

    私の寝室のガラス戸1枚向こうは、雑多な植木や草花が植わっている狭い庭だ。
    私は樹木をあまり刈り込むのが好きでない。可哀想なのだ。
    珊瑚樹や桜、椿、観音竹、蘭などが行儀悪く繁っているが、その自然さが大好きだ。
    窓をあけて木々の匂いを嗅ぎながら、深呼吸をする。深山もどきの匂いがする。
    緑を見ているとホッとする。
    時おり鳥がくる。鳥の名前に精通したいとおもう瞬間だ。

    珊瑚樹の根元に置いた甕には、金魚とメダカ。
    
    北向きの窓は南向きに比べてひんやりとし、日が差し込まないせいか薄暗い。
    だが私はこの部屋が気に入っている。窓辺からの眺めが心地いい。
    狭い家なのに、窓辺の表情が全く違うのは面白いことである。
    
    
   2020.4.23