川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                     マスクランチ



    この時期に世間の皆様ごめんなさい、心の中で詫びながら、友人たちとランチを楽しんだ。
    奈良では知る人ぞ知る、イタリアンの店らしい。
    私達5人はゆったりとしたテーブルに、マスクをつけたまま座った。
    幸い早い時間のランチなので、客は私達だけだ。

    まずビールで乾杯! グラスをカチンと合わせかけて気づいた。乾杯をしてはいけないのだ。
    静かに飲んで静かに食べないとと、自分に言い聞かす。
    だが癖とは恐ろしい、グラスを持つと、ついつい相手のグラスにカチンと合わせたくなって
    しまう。
    乾杯はご法度のビールは、忘れ物をしたような気分だ。

    私はビールを1口飲んではマスクをつけ、また外しては1口飲む。
    その合間に生ハムや蓮根、チーズの前菜を口に運ぶ。
    マスクの取り外しが面倒だ。何を食べているのか、食事に集中が出来ない。
    パスタを食べる頃には、とてもじゃないがマスクは邪魔だった。
    ソースがマスクにつきそうで、煩わしいことこの上ない。
    友人たちはと見れば、いつの間にか顔からマスクが消えている人もいる。
    「うっそー! マスクマスク」
    粛々と食事は終わり、最後のデザート・コーヒーで、ようやく全員のマスクが復活。

     
    白状すると、3月半ばにも大阪のホテルで食事をした。
    広いテーブルには、紙製の使い捨てマスクケースが置かれていた。
    外したマスクを入れておくものだ。
    食事中は外しっぱなしでいいという意味だろうか?
    もっともそんな心配もいらないくらい日本料理店は空いていて、私と夫のみだった。
    趣向をこらしたしつらえ、季節の花、そんななか手持無沙汰な従業員。聞こえるのは
    私と夫の小声のみ。空気までもが沈み込んでいる。
    このような状態のホテルを見るのは初めてだ。大川沿いの老舗ホテルなのに。
    心底、コロナ感染症の影響力は恐ろしいと思った。
    
    会食やランチ時のマスク、皆さんはどうされているのかな? 
    それとも、いまは外食を自粛されているのかな。
    それにしてもイタリアンにマスクは難しい。

    
                    2021.4.8