川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
エッセー  旅  たわごと    雑感 出版紹介 




                 キューカンバ―・ウオーター




    我が家の小さな畑で、胡瓜が採れだした。
    初物のあいだは有難がって、食べ方にも工夫を凝らすが、さあそれもいつまで続くかな。
    ひと夏を楽しめる、シンプルで飽きのこない使い道はないだろうか?
 
    そうだ、キューカンバー・ウォーター!
    名前はお洒落だが、ようはキュウリ水だ。
    むくみ解消、クールダウンに効果があるとか、これからの季節には持ってこいだ。
    作り方は簡単。
    胡瓜を薄くスライスしてレモンを一切れ、それに水を注ぐだけである。
    仄かに胡瓜の香りがしてスッキリとした味わいである。
        

    「キューカンバー」で、思い出す人がいる。
    年下の彼とは妙に気が合うというか、話が合った。
    お洒落でエネルギッシュで博識で、いちめん繊細だった。
    たしかビールを飲んでいる時だった。
    「とても美味しくて簡単な料理を教えましょうか。騙されたと思って作ってみてください。
    材料は、胡瓜と食パン、バター、ワインビネガー、塩、胡椒。それだけです。
    イギリスでは人気のサンドイッチで、キューカンバー・サンドイッチと言うんですよ」

    だが私は1度もそのサンドイッチを作った事がない。
    「騙されたと思って、今年は作ってみるよ。それにしても胡瓜を英語にするだけで、
    なんだか高級な食べ物の気がするね」
        
    そんな彼は、阪神大震災の年に逝ってしまった。
        
    忘れないよ!

                      2020.6.5