川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                    巨樹を訪ねて 2



    門真市の薫蓋樟(くんがいしょう)に続き、今回は堺市中百舌鳥の大楠を訪ねた。
    樹齢1000年を優に越す薫蓋樟の瑞々しさ生命力に対し、「百舌鳥のくす」は少々趣を
    異にする。
    幹の中ほどまでは空洞で、根元も痛々しく剥がれ落ちたり、割れたりしている。
    そんな幹の周りには紙垂が巻かれ、傍らには小さな祠が祀られている。
    雨乞いの効験あらたかな霊木として祀られてきたそうだ。

    広い空洞の中には新たな若木が生えていて、なんとも神秘的なたたずまいだ。
    友人は、しばらくは言葉が出ない様子で、空洞を眺めている。
    だが見上げると、上部の枝には滴るような葉が繁っていて、私たちをホッとさせた。
    「生きるって、こういうことやね」
    「私もこのように頑張っているのだから、貴女達も頑張りなさいよって、教えられている
    みたいね」
    私たちは口々に言いあった。
    薫蓋樟が元気や生命力を与えてくれる巨樹なら、「百舌鳥のくす」は勇気や頑張りを
    与えてくれる巨樹だ。

    大阪府指定天然記念物の「百舌鳥のくす」は、国の登録有形文化財に指定されている
    筒井家住宅の敷地内に根を下ろしている。
    樹齢は800〜1000年。幹回りは10、1M、樹高は13Mだ。
    平安時代の頃から、この世に生きているのか……。

    横に広がる屋敷林からは聞き慣れぬ鳥の声が……。
    ブッポウソウ ブッポウソウ ブッポウソウ
    そして楠の前には新緑に覆われた御廟表塚古墳が美しい。
    一帯は心静まる歴史の宝庫である。
   

    

                       2022.4.20