川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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               クリスマスプレゼント



   実は今年の春から口の中に妙なものが出来て、気がかりだった。
   気がつけば舌で異物を触っている。
   病院怖い病の私は、ずっと我慢をしながら過ごした。
   人と会っていても、旅行をしていても、意識は常に異物に集中していた。

   とうとう我慢が出来なくなって、やっと腰を上げたのは、10月に入ってからだ。
   歯科医はレーザー治療を施しながら、質の悪いものではないけれど、もし大きくなるよう
   だったら、紹介状を書きますよと言った。
   「そんなもの書いて要りません!」、心の中で私はそう叫んだ。
   怖がりの私に、馴染みの医者は親切にそう言ったのに、マイナー志向の私は最悪を想像し、
   大病院で顔じゅうを手術されている映像が浮かび上がる。
   「ヒエー」、血圧が急上昇したのが分かる。何と軟弱な患者であることか。

   その後も治療や経過観察を続けた今日、
   「次は1か月後でいいですよ。その時は3分の1ぐらいになっているはずです」
   急に歯科医が神様に見えた。それともサンタさんかな。
   思わず「わあ、うれし!」と、声に出した。
   今日はクリスマス。最高の贈り物だ。

   命を落とすほどの大怪我も、医者から覚悟しといてと告げられた出来物も、血栓も、みんな
   すれすれのところで助かっている。
   おおいなるものの加護を受けているのだ。
   助けられた命、無駄にはできないなあ……。今日の私は殊勝だ。
   
   庭の珊瑚樹が真っ赤だ。寒さと共にいよいよ真っ赤になってくる。
   やっぱりね。いいことが起こる印だって、言ったでしょ。

   今夜は盛大に乾杯だ!
   
   
                2810.12.25