川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                   黒豆を焚いている



    今年の我が家は、夫の転倒に始まり転倒に終わった。
    その度に頭部を強打し、病院のお世話になりCTを撮った。救急車で運ばれたこともある。
    11月の転倒時はMRIの検査を受けた。
    画像には小さな出血痕が、白く点々と映っていた。
    医者からはいつ大きな出血が……と、脅かされた。
    病院からの帰り道、私は夫に言った。
    「お父さん、よう頑張ってるね」
    「……うん」
    少なからず落ち込んでいる夫を元気づけようと、
    達磨さんは7転び8起き。お父さんはまるで達磨さんやな。
    夫は少し笑った。

    
    今年の大晦日もコトコトと黒豆を炊いている。
    甘い匂いが台所に充満し、おだやかでゆるゆるとした時間が流れている。
    終わりよければすべて良しだな、ご都合主義の私は思うのである。

    今年も話のポケットにお付き合いくださいまして有難うございました。
    来年も皆様にとりましてよいお年でありますように。


              2023.12.31