川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                  幸運のお裾分け



    信貴山は自宅から車で30分ぐらいの手軽さなので、気分転換によく出かける。
    山内を少し歩いて、食事かお茶をするのが定番のコースだ。
    ところがである。
    その日は赤い開運橋の片側に人が大勢集まって、何やら下を覗き込んでいた。
    開運橋は国の登録有形文化財に指定されている、由緒正しい橋である。
    物見高い私は急いで人の集まりの中に紛れ込んだ。
    
    「バンジージャンプだ!」
    開運橋から30m下の大門池めがけて飛ぶのだ。
    運のいい事に20代の男性が丁度飛ぶとこらしく、両手を胸の前でクロスさせて
    準備をしていた。
    怖くてなかなか飛ばないんだろうなと思っていると、いともあっけなく男性は飛んだ。
    もう少しじらしてもいいのに……。
    そして長いロープに吊り上げられ放り出され、ゆーらゆーらと宙を舞った。
    「開運バンジー」と呼ぶらしい。
    果たして勇気あるこの男性に、どんな幸運が訪れるのだろう。
    それにしても何度も信貴山には来ているのに、生のバンジージャンプを見たのは初めてだ。
    私は幸運のお裾分けにあずかったようだ。
    
    なんだかいい事がありそうで、ゆっくり山内を巡っていると、
    馬に乗った聖徳太子の銅像に出会った。
    何度も通った場所なのに、今まで銅像に気づかず通り過ぎていた。
    エキゾチックな素敵な銅像だ。太子も馬も異国の雰囲気を纏っている。
    それもそのはず、作者は長崎の平和記念像を作った北村西望氏だと知り納得をした。
    今年は聖徳太子1400年遠忌の年だ。
    やはり私は幸運のお裾分けに預かったようだ。
    
    ちなみに、幸運を運んでくれる対価は1人、1万円だとか。
    高いのだろうか、安いのだろうか……。





2021.7.21