川上恵(沙羅けい)の芸術村 | ||||
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今年の十五夜 さいきん月光浴という言葉をよく聞く。 満月の光を浴びると心が清められ不安やストレスが軽減するらしい。 セロトニンという物質が活性化し、幸福感が増すそうだ。セロトニンの増加は 日光浴だけでは無いのである。 そこで、 ストレス満載の私は、今年の満月は思う存分その光を浴びることにした。 月が昇るのを川原で眺めた。 朱色の大きな月が昇ってきた。月ってこんなにエネルギッシュな色だったのか、それに この大きさ。私は口を開けて月の光をガブリと飲み込んだ。 やがて月は少しずつっ空高くなってゆく。それにつれて少しずつ小さくなってゆく。 でも、これって……。 以前、何かで読んだ記憶がある。 月の大きさは変わらないそうだ。目の錯覚だとか。 こんなに顕著なのに、目の錯覚と言われてもねえ……。 この現象を「月の錯視」と言うらしい。 私は電車に乗って、神々しい月を追いかけたくなった。 車窓からずっと神秘的な青白い満月が見えるはずである。 道明寺駅から橿原神宮前まで電車に乗った。 二上山・当麻寺・磐城・浮孔・坊城・橿原神宮西口…… 月は窓に浮かんだり隠れたりと、私をやきもきさせたが、 なかなか乙なお月見だった。 存分に、月の光を浴びた私は充分に浄化されたはずである。 ふと満月の夜に現れるという狼男を思い出した。 2023.10.1 |