川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                   今年は南南東



    「今日はお寿司の丸かぶりの日やから、巻き寿司を買って来て」
    夫に頼んだら、なんと鉄火の、いやいやマグロの太巻きずしを買ってきた。
    具はマグロだけがどんと入っていて、なんとも味気がない。
    最近は巻きずし1本を食べると、他のおかずが食べられなくなるので、ハーフにしている。
    それでもマグロの太巻きはずしりと重い

    「あの細さやから鉄火は美味しいのに。せめて鉄胡やったら」と、文句を言いながら
    南南東を向く。

    太い鉄火巻きに、わさび醤油をチョンチョンとつけては口に入れる。
    無言で食べては、またチョンチョンとつけて頬張る。
    こんな食べ方でもご利益はあるのかしらん、と、またチョンチョンだ。
    夫はと見ると、黙々と口を動かしている。
    
    どうか福が来ますように……。
    

    わが家から南南東は、どんな所だろう。
    地図を、こころもち右にそれながら下ってゆく。
    なんと小屋のある野迫川あたりではないか。長い間、小屋は放りっぱなしである。
    今年は恵方に当たるのか……。小屋が呼んでいるのかなあ……。

    
    その先をずっと行くと串本、そして太平洋だ。広々とした明るい海だ。
    開けた、広がりのある年になりそうな、そんな予感。
    節分が過ぎたら春だ。

                 2026.2.4