川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                    この時期に?



    夜お風呂に入りながら歯磨きをしていたら、湯舟に何やら落ちた。
    小さなものはゆっくりと沈んでいく。
    うん? 口の中の様子がいつもとは違うな。スカスカとする。
    「差し歯だ! 差し歯が外れた!」
    慌てて両手で掬い取った。

    何もこのコロナ禍に外れることはないのにと、忌々しい。
    人様に会うことはないし、常にマスクを着けているし、少し放っておこうかとも思ったが、
    上手く嵌らなくなっても困るので、重い足を運んだ。

    馴染みの歯科医院は清潔の上にも清潔だ。
    差し歯は簡単に元の歯に収まった。帰り道、私の足取りは軽かった。
    ところがである。
    数日後、今度は下の歯の銀色の被せ物がとれた。仕方がない、また簡単にくっつくだろうと
    歯医者に出かけた。
    「川上さん、この歯は土台から直さないといけないので、ちょっと頑張ってね」
    怖がりの私をなだめながらの治療である。
    
    それにしてもなぜこの時期なんだ!
    もう少しでワクチン接種だというのに。
    あっ、そうだ!
    神戸の病院の予約もしないといけないなあ。


             2021.6.2