川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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               子供のころのように



    気分が負のスパイラルに陥っている。
    じめじめと、家の中も私の心も鬱陶しい。

    ふと、傘を買おうと思った。
    それも思いっきり雨の色の傘を。

    水色と黒色、2本買った。
    水色の傘は少々の雨では濡れないほどの大判だ。
    黒は晴雨兼用だ。完全遮光、UVカットだそうだが、日傘など差したこともないのに、
    かつて日焼け対策などしたこともないのに……成り行きである。

    子供のころ、傘をさして雨の中を歩くのが好きだった。
    紗のカーテンに閉じ込められたようで、なんだか別世界にいる気がした。
    傘に響く雨音は面白かったし、クルクルと傘を回し飛沫を飛ばすのは楽しかった。
    洋服が濡れてもちっとも気にならなかった。

    洋服の裾が塗れるのが嫌になったのは、いつからだったろう。
    たぶん、それが大人への入り口……。

    雨が降り続いている。
    水色の傘をさして外を歩いてみようか。


2020.7.26