川上恵(沙羅けい)の芸術村
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                   気なる場所



    10年ほど前から、気になって仕方のない場所があった。
    ある日突然にという感じで、山の中腹に朱色の鮮やかな五重塔が出現したのだ。
    それは外環状線を走っていても、国道170号線を走っていても、河内長野が近づくと
    目に飛び込んでくる。
    神社仏閣の好きな私だが、たぶん新興宗教だろうと、お参りするのを遠慮していた。

    ところがである。ひょんなきっかけで、友人に案内してもらうことになった。

    「わあ、なんと美しいお寺だろう。まるで絵葉書のよう!」
    間近でみる五重塔の華麗さ大きさには圧倒される。朱色に金色の相輪が眩い。
    大阪で唯一の木造瓦葺で高さ37m、全国10位の高さである。
    釣鐘堂の梵鐘は12トンで、全国で4位の規模だ。
    さらに大本堂は550坪もあり、真言系では戦後最大規模だそうだ。
    
    お寺の名前は、「大本山 目白不動尊 浄心山 願昭寺」 
    昭和30年「八宗兼学真修教」として開基された。
    八宗兼学とは特定の宗旨宗派に属さない教えである。
    ちなみに、
    天台宗・真言宗・浄土宗・浄土真宗本願寺派・真宗大谷派・臨済宗・曹洞宗・日蓮宗を言う。
    片寄らない心で、広くお釈迦様の教えを学ぶということだろう。

    本堂の前方には緑したたる山並、仁王門からの眺めは天気が良ければ大阪湾が望めるそうな。
    建物が壮大ならロケーションもまたこの上なく壮大である。
    山の中腹に開かれた清浄な聖地は、野鳥のさえずりも天上のもののようだ。
    「不動の御山」「淨心の御山」は、悩み事・辛い思いの捨てどころ、
    とは上手くいったものだ。

    それにしても人影が全くないのは寂しい。
    ひっそりとした本堂で手を合わせているのは友人と、私だけである。

    なんだか霊気のようなものが漂っている気配が……。
    

 2022.5.1