川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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                  貸農園



    「最近、野菜を食べる量がへったねえ」
    「体調がいまいちなのは、野菜不足かなあ」
    「畑でとれたオクラの天ぷら、美味しかったねえ」

    今日もこんなに採れたの、食べきれないね。と文句を言いながらもせっせと口にしていた
    野菜。
    夫が畑をやめてから、めっきり食べる量が減った。
    人間って何と勝手な生き物なんだろう、それとも私が勝手なのか……。
    有り余るほどあるときは文句をいい、無くなれば途端に欲しいと思う。
 
    知人は私が漬物をつけていると言うと、
    「へえ、めえちゃんが漬けもんを。信じられへん」と一様に言った。
    有り余るキュウリやナス、さすがの私でも漬物をつくるのだ。
    今は便利な糠漬けの素があって、冷蔵庫で美味しく漬けられた。
    
    だが最近は、漬物の容器を開ける回数がずいぶん減った。
    
    先日、友人から採れたての秋ナスをもらった。なんと艶やかで色の美しいこと。
    さっそく、浅漬けとナスの煮びたしをつくった。美味しかった。ふっくらとした
    畑の味がした。
    そして今日、家庭菜園をしている友人から、インゲン豆をもらった。
    自分で食べるものを作るっていいなあ……。
    手放した小さな貸農園が今更に愛おしい。

    来年の春はプランターで夏野菜をつくろうと決めた。
    キュウリとナスとプチトマトとピーマンとオクラと……。
    
    
毎日、こんなに採れた
のになあ。

             2024.9.20