川上恵(沙羅けい)の芸術村
 話のポケット
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               体は正直
   


   あの酷暑は夢だったのかと思うほど、過ごしやすくなった。
   体は正直だ。息がしやすい。
   足に鉄の重りをつけられたほど、1歩を出すのが辛かったのに、重りが軽くなった。
   1週間でころりと変わる気温、光の色、あのベタリと重い空気はどこへ流れて行ったのか。
   外国は知らないが、日本の四季の移り変わり方に神秘を感じる。

   と、ゾロリゾロリと好奇心の虫が騒ぎ出す。
   疎ましかった友人からの誘いが、魅力的に思えだす。
   次に誘いがあったら、1も2もなく乗るだろう。

   この分だと、
   いつもは下から眺めている鳥取砂丘の上に登れそうだ。
   あちこちのローカル線にもトライできそうだ。
   かくれ里を1人で旅するのもいいなあ。
   頭の中は楽しいことでパンパンに膨れ上がっている。
   いい調子だ!


   うん?
   なんだか寒気がするなあ。鼻がグスグスとする。
   しまった、風邪をひいたかな。
   昨夜、窓を閉め忘れて寝たせいだ。

   体は正直だ。所詮私のやわな体は、こんなもんだ。
   好調なときは3日と持たない。

   ふと、私はいまどの辺りの季節を生きているのだろうと考える。
   初春・仲春・晩春・………初冬・仲冬・晩冬。
   なんと細やかで美しい季節の区切り方だろう。
   晩夏なんて、大人の気怠さが感じられて素敵だけれど、とっくに過ぎたかな。
   いま、晩秋にいるのかな。
  
   そんな戯言より、風邪を早く治さなければ。

       
                      2018.9.13